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by 星野健一

松岡譲『法城を護る人々 上』

松岡譲『法城を護る人々 上』

 『出家とその弟子』、『死線を越えて』などを土台とする大正期の宗教文学ブームのなかで生まれた作品です。私が古書店で入手にしたのは、大正14年12月1日発行で第52版となっています。(すごい売れ方!)

 主人公の宮城圓泰のセリフが現代の宗教論・仏教論にも通じうる警句のようです。

一體在家とは變はつた一種特別な寺といふものがいけない。俗人と飛び離れた僧といふものがいけない。宗教の法悦が特殊な寺といふものの中に住む、特殊な僧といふものにのみ許されたものならば、其宗教は取りもなほさず死んだ宗教である。(168頁より引用)

 特殊な空間に住まう者の特権。いささか《こすりすぎ》の論点かもしれませんが、人間集団を「死んだ」状態にしないためには、何度でも問い直す必要があると思いました。

 中下巻は未読ですが、読むのが楽しみです。
    写真、ぼろぼろですみませんm(_ _)m

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by dreamingmachine | 2021-07-12 21:11 | 近代仏教研究